静電チャックとは

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静電チャックとは

静電チャックとは、電気的な力で対象物(ワーク)を吸着させる機器です。

目には見えませんが、あらゆる物質はプラスとマイナスの電荷を持っています。ワークを静電チャックに載せた状態で、内部電極にプラスとマイナスの電圧を印加すると、ワーク内のプラスとマイナスの電荷が内部電極の極性と引き合うように移動します。この静電チャックとワークの間で発現する引き寄せ合う力が、静電チャック吸着の仕組みです。

「静電気」と言えば、冬場に車のドアを触ったときバチッとくる嫌な経験を思い出される方も多いと思います。これは衣類の摩擦などにより、人に蓄えられた静電気がドアノブに流れたときに発生するものです。電流が流れる軽度の感電をしている状態であり、人は痛みを感じます。

一方、静電チャックは図のようにワークに内在する電荷が移動するだけのため、電流は流れず、人やワークに影響を及ぼしません。当然、バチッとくるようなこともありませんので、安全にご使用いただくことができます。

静電チャックはモノをくっつける機器。それでは、どのようなところで使われているのでしょうか?

こんなところに静電チャック

たとえば、皆さんがお持ちのパソコンやスマートホン、自動車をはじめ、多くの電気製品には「ICチップ」と呼ばれる部品、すなわち人間の脳のような働きをする電子部品が組み込まれています。このような部品は一般的に「半導体」と呼ばれていますが、静電チャックは半導体を製造する過程において、基板材料となるシリコンウェハーを大気・真空を問わず確実に把持(はじ)する機器として重要な役割を担ってきました。

近年ではその吸着力を生かし、工場の自動化を促進するための静電気ロボットハンドとして活躍しています。また画鋲やマグネットを使わない新しい静電気掲示板としての用途開発も進んでおり、静電チャックは人々の暮らしをより便利にするためのアイテムとして注目を集めています。

このように、静電チャックは皆さんの身近にある「あたりまえ」を裏から支える、言わば縁の下の力持ちです。

なぜ静電チャックが選ばれるのか?

ここまで静電チャックとは何か、そしてどのようなところで使われているのかご紹介してきましたが、世の中には静電チャック以外にも、メカクランプやバキュームチャック(真空チャック)といったワークを把持する方法があります。その中で、なぜ静電チャックが選ばれるのでしょうか?

それは、静電チャックがワークに優しい吸着機器だからです。たとえば、薄い金属箔やフィルムといった繊細なワークを吸着する場合、少しでも物理的な力が加わると、ワークにダメージが入り、それだけで欠陥品となってしまうことがあります。この点、静電チャックは電気的な力でワーク全体を均一に吸着するため、ワークへの物理的な負担が少なく、このような繊細なワークを吸着するのに適していると言えます。

また、布のように比較的しっかりとしたワークを吸着する際には、メッシュなど穴の開いた素材でも難なく吸着でき、平面を保ったまま搬送することに優れていますので、近年の世界的な自動化・省人化の流れの中で選ばれる機会が増えてきました。

静電チャックはよくバキュームチャックと比較されることがありますが、それぞれどのような特長があるのか見ていきましょう。

  静電チャック バキュームチャック
大気中の吸着
真空中の吸着 ×
穴のある素材の吸着
応答性
騒音 ×
消費電力 ×
価格
吸着痕 残らない 残りやすい
ワークとの相性 形状・表面状態を選ぶ 形状・表面状態に左右されにくい
ワークサイズに合わせた工程変更 原則不要 原則必要
駆動源 静電チャック制御電源 コンプレッサー

同じ吸着機器でもこのように違いがあります。

「他の吸着機器で上手くいかない」とお悩みの方は、是非一度静電チャックをご検討ください。

クリエイティブテクノロジーの強み

私たちクリエイティブテクノロジーは、25年以上静電チャックをつくり続けてきた静電チャックのパイオニアです。新品製造はもちろんのこと、それまでディスポーザブル(使い捨て)とされてきた静電チャックの再生にも世界で初めて成功しました。

現在私たちが力を入れて取り組んでいるのは“あらゆるワークを吸着させること”です。

静電チャック材料や内部電極パターンの研究を重ね、一般的には吸着しづらいとされるガラスや布の吸着を可能にしました。そして今私たちの研究は、これまで静電チャックでは難しいとされてきた立体物の吸着にまで及んでいます。

また、吸着させたら“はがすこと”を忘れてはいけません。私たちは様々な角度から静電チャックの応答性を高める取り組みを行っており、お客様が現場で使用することを第一に考えたトータルシステムでの提案にも注力しています。

豊富な経験を生かし最適なソリューションをご提案いたしますので、静電吸着のことなら、まずはクリエイティブテクノロジーにご相談ください。

よくいただくご質問

■ はじめてご検討いただくお客様

  1. Q1考えていることが静電チャックでできるのか検証したいです。

    静電チャックおよび制御用電源のデモ機を常備しておりますので、お気軽にお問い合わせください。ワークサンプルをお送りいただく場合や当方からデモにお伺いする場合など、お客様のご希望に応じて対応させていただきます。

  2. Q2静電チャックを使用したいのですが、経験がなくて困っています。

    当社には豊富な開発経験と実績がございます。静電チャックおよび周辺技術(電源、真空導入方法、給電方法、吸着モニター等)を一括でご提案いたします。

  3. Q3最低限、何があれば静電チャックを使用できますか?

    静電チャック本体と制御用電源が必要になります。当社の電源をご使用いただく場合、一般的な家庭用コンセント(AC100V)があれば使用可能です。
    ※静電気ディスプレイボード「ESCLIP」は乾電池駆動にも対応しております。

  4. Q4静電気がワークに悪影響を与えることはありますか?

    静電吸着はワーク内部の電荷の移動により吸着力が発現するため、基本的にワークにダメージを与えることはありません。ただし、ワークの材質によっては、帯電が残りやすいことも考えられます。もしご心配であれば事前に吸着テストを実施することを推奨しておりますので、お気軽にご相談ください。

  5. Q5静電チャックが不得意な環境はありますか?

    静電チャックは水分が苦手なため、屋外での使用や濡れたワークの吸着には適しません。同様に油分にも注意が必要です。

  6. Q6静電チャックとロボットを組み合わせて使用できますか?

    問題ありません。ロボットに合わせた静電チャックのオーダーメイド設計が可能です。また、専用電源は外部信号入力による電源のON/OFF、および印加電圧の設定ができます。

  7. Q7海外への輸出は可能ですか?

    納入形態によっては輸出貿易管理令の制限対象になる場合がありますので、個別にご相談ください。

■ 安全性・お手入れについて

  1. Q1どのようなお手入れが必要ですか?

    吸着面にごみやほこりが付くと吸着力が低下してしまいますので、必ず電源を切った上で、定期的に工業用アルコール(IPA)を含ませたワイパー等で拭き取っていただくことを推奨しております。
    ※静電気ディスプレイボード「ESCLIP」は乾いた布でのお手入れを推奨しております。

  2. Q2吸着面を触っても問題ありませんか?

    基本的には問題ありませんが、お取り扱いの際は安全のためゴム手袋を装着していただくことを推奨しております。
    ※静電気ディスプレイボード「ESCLIP」は素手で触れる設計となっております。

  3. Q3どのような故障原因がありますか?

    吸着面に傷が入り、内部電極がむき出しになると吸着機能を喪失します。また感電するおそれがありますので、この状態では絶対に使用しないでください。故障と思われる場合、まずは当社までご連絡ください。

■ 静電チャックの機能について

  1. Q1電源を切っても、ワークが静電チャックから剥がれません。

    静電チャックと電源との組み合わせにより、最適な静電チャックの開発と電圧印加の方法や除電方法をご提案いたします。また、必要に応じてワークリリースの機構をご提案いたします。

  2. Q2ワークの反りやカールを矯正できますか?

    程度によって異なりますが、大きな反りやカールは静電チャックでも矯正できない場合があります。静電チャックや電源の条件出しを行い、ワークの反りやカールを矯正する検討も可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

  3. Q3バキューム吸着と比較した場合、吸着とリリースにかかる時間は?

    ワークの材質によっては、バキューム吸着に比べると吸着・リリースに時間を要しますが、吸着・リリースの条件を最適化することで、時間の短縮は可能です。

  4. Q4吸着力の数値データはありますか?

    ワークの材質によって異なります。金属などの導体は吸着しやすく、ガラスや布などの絶縁体は吸着しにくい傾向にあります。また、水平と垂直方向に強く、引き剥がしの力に弱いというのが静電チャックの特徴です。個別に吸着テストを承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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